第13話 銀河の断片(前編)〜機械の孤独〜

〜 ウルトラウーマンキャッティ 〜

 漆黒の宇宙を、紅い影が駆けていた。
 キャッティの小型宇宙艇は、フェリダ圏を離れ、銀河の外縁部を漂っている。兄たち、レオとアストラの手がかりを求めて。だが、広大な宇宙の中では、目的地も確かな情報もなく、ひたすら星から星へと航路を刻む日々が続く。
 そんな中、艇のセンサーが異常信号を捉えた。
「漂流信号……座標、ヴァルゼ小惑星帯?」
 キャッティが航路を微調整し、信号の発信源へ向かう。そこは、銀河地図にもほとんど記載されていない、資源採掘で一時期栄えたが、現在は放棄されたとされる小惑星地帯だった。
 荒廃した岩塊の間を抜け、キャッティはひとつの小さな人工構造物を発見した。廃棄された探査ポッドだ。しかし、その周囲にかすかな熱源反応がある。
 キャッティは警戒しつつ、ポッドへ近づく。無防備なほど小さな機械生命体が、瓦礫の影で震えていた。表面は傷だらけで、ボディの一部は焦げ、エネルギー供給も限界に近い。
「大丈夫? 私は敵じゃない」
 キャッティがそっと手を差し伸べると、機械生命体は怯えつつも反応した。ボイスモジュールがノイズ混じりに震える。
『た、助けて……この星に……閉じ込められたんだ……』
 声はか細く、明らかに消耗しきっている。機械の眼に、キャッティの紅いボディと銀の装甲が映り込む。警戒心が薄れたのか、機械生命体は小さな身体を揺らして近づいてきた。
 キャッティはすぐに宇宙艇へ戻り、応急処置を施す。
「このまま放っておいたら、動けなくなるとこだったよ」
 フェリダで身につけた修理スキルを駆使し、必要最低限の補修を済ませる。機械生命体のボディが微かに光を取り戻した。
『ありがとう……助かった……』
「名前は?」
『名も、番号も、忘れた……ここに不時着して、ずっと、独りぼっちだったから』
 その言葉に、キャッティの胸が締めつけられる。兄たちと生き別れ、宇宙で孤独を知った彼女には、その苦しみがよく分かった。
「私はキャッティ。兄を探してるんだ」
『きみも、独りなんだね』
「違う。独りじゃない。……君も、もう独りじゃないよ」
 キャッティの言葉に、機械生命体は微かに震えた。光の宿ったそのボディが、生命の温度を取り戻していく。
 宇宙は広い。だが、孤独は絶対じゃない。
「さあ、一緒に出よう。この星から、自由になろう」
 キャッティは機械生命体を抱え、宇宙艇のブースターを解放した。
 ヴァルゼの荒野が、次第に遠ざかっていく。